写真家・星野道夫さんは、
アラスカに惹かれアラスカに住み、
極北の様々な風景や生き物の写真を撮り、
文章を書き、
熊に襲われて生涯を閉じました。
岡山で秋に写真展があり、初めて彼の存在を知りました。
写真展には行けなかったのですが、
どうしても彼の人生に興味が湧き、
何冊か著書を購入して読んでいます。
写真もさることながら
文章がとても美しくて、
たまに呼吸を忘れます。
彼の文章を読むと、
目の前に北極の流氷が漂う風景が見えたり、
極寒の空の下、しんと静まり返った大地に
雫がポトリと落ちる音が聞こえたり、
ムースのまつ毛についた氷が、太陽の光を受けて
キラと輝く瞬間がまるで目の前に見えてくるようなのです。
悠々と流れるアラスカの時間、この地球上に確かに存在する北極の美しさや過酷さを想像すると
自分が日本という国で、時間に追われながら生活しているのがなんとも不思議に思えます。
生き物として間違っているのではないか?とさえ思うのです。
私が動物を描くのは、彼らが美しいからです。
何にもとらわれず、ただ生きることを目的にしている彼らがとても美しく思えます。
星野さんも少しだけ、そういう気持ちだったのかなと思ったりします。
だからものすごく彼の写真や文章に惹かれるのかなと思います。
今こうしている瞬間も、アラスカでは熊に襲われ生き物が息絶え絶えになっているかもしれないし、
そんな光景を美しい太陽の光か、もしくは青白い月の光が平等に照らしているのかと思うと
走り出したくなるような、なんとも言えない気分になります。
満点の空の下ではじめての芽が出ていたり、
セイウチが出産していたり、
ジャコウウシが命をかけて戦っているのかもしれない。
彼らには一時間も1日も一年という概念もなく、
ただその一瞬一瞬があるだけ。
一度でいいからその気持ちを味わってみたい。
どんなに爽快な気分だろうと思うのです。